人生のツケが押し寄せすぎ

40歳ひとり暮らし貧乏女の心境と愚痴

誰か守ってください

北海道の田舎に住んでいます

結構な頻度で野性動物が住宅街に出没するので、わりと慣れっこではあるのですが……

先日のことです

早朝、仕事に行こうと玄関を開けた矢先に事件は起こりました

……鹿です

角の生えた立派な雄鹿と至近距離で対面

距離にして1メートル弱です

余りの衝撃にしばし見つめ合った後、そっとドアを閉めました

私は早めに家を出る習慣があるので、10分程の猶予は残されています

若い子ならともかくとして、36歳のババアが

「すみません、鹿が怖いので遅れます」

と言えるわけもないので、とりあえずドアをバンバン叩いてみました

音でビビらす作戦です

アパートの住民から苦情が来そうなほど派手な音を奏で、期待を込めてドアを開けると

なんというでしょう

音に興味を示したのか鹿が間近に迫っていたので、刺激しないように静かにドアを閉めます

困りました

一旦部屋の中に戻り、窓から様子を眺めると、鹿が目線に気付いたようです

鳥類はモデルガンを向けると逃げていくと何かで読んだ記憶があったので、哺乳類も大して変わらないだろうと期待を込めて、芋虫のように短い指で田舎チョキを作り狙いを定めます

気分はガンマンです

銃弾をぶっぱなした後に、反動で銃口を上に向けるのも忘れません

我ながら芸が細かくて感心します

20発ほど打ち込みましたが、鹿は微動だにしません

心なしか、つぶらな瞳に哀れみの色が見てとれます

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おやつではありません

夜ご飯です

もうお米がないので、明日買ってこようと思います

時計を確認すると、すでに5分が経過していました

焦った私は、壁に立て掛けてあるクイックルワイパーの柄を持ち「るろうに剣心」に出てくる斎藤一牙突のポーズを決めました

先端は鹿に向けます

なんだか楽しくなってきたので口元が綻びます

完全に不審者です

………………

奇跡が起きました

恐れをなしたのか呆れたのか、鹿が隣の人の玄関口まで移動しました

チャンスです

素早くドアを開け、極力音を立てないように鍵をかけます

鹿がこちらを見ていますが、ナウシカばりの笑顔を浮かべ敵ではないことをアピールします

「ほら、怖くない、怖くない

おびえていただけなんだよね」

熊から逃げるときは決して背中を向けてはいけないという「釣りキチ三平」で得た知識を総動員して、目を合わせたまま後ずさり、駐車場に向かいました

一平じいちゃんが崖から落ちて、左足が3センチ伸びる話が好きです

かくして遅刻は免れましたが、ゴミ棄て場で待ち構える肥え太ったカラスとの戦いなど、スリリリングな毎日を過ごしています

守ってくれるパートナーが欲しいです

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