幼なじみは運送の仕事をしています
ここ数ヵ月の私の落ち込みっぷりを見て、性格が合いそうな人を探してくれたとのこと
配送先の細身高身長イケメン薬剤師27歳
彼女がいたことがないそうです
………………
まず私の歳を伝えたのかと訊ねます
「伝えた
その代わり容姿はかなり盛っといた
女に免疫ないから上手く丸め込めればいける」
聞けば私の写メが見たいと言われ、幼稚園時代の写真を見せたとのこと
言ってくれれば最近の映りいいやつ送ったのに……
と不満を漏らしますが
「それだと相手が気乗りしないかもしれない
会ったらマスクで乗り切れ!」
残酷な事実を突き付けられます
モテ期が幼稚園だった女です
ハイスペック20代のイケメンが私と結婚してくれる可能性は限りなくゼロなので、気持ちだけ受け取っておきました
スイカの美味しい季節です
人生に絶望しているので、食生活が乱れに乱れています
休日に連勤分の食材を買い込むのですが、自炊をする気力がないので、毎食惣菜かコンビニかテイクアウトをする毎日………
腐らせた食材を捨てる度に落ち込みます
ズンドコな私生活もといドン底状態に加え、職場でも濡れ衣で怒られまくり、全てが嫌になった私は、遅番後に夜の公園へとウォーキングに出掛けました
湖のある公園で、奥の方は昼間でも草木が生い茂っており暗くて不気味なので、ひとりでは立ち入りません
部屋で死のうと思ったのですが、賃貸で自殺をすると遺族に1千万円の賠償請求がいくらしいので思い止まりました
真っ暗で人気のない公園の駐車場……
街灯を頼りに車の助手席に置いてあるスニーカーに履き替えます
………………
なかなか不気味です
スマホの灯りをライト代わりに歩き始めますが、暗すぎて危険なので湖には近寄らず、ベンチの置いてある花壇の周りをウロウロします
………………
私はいつまでひとりなのだろう
………………
湖に飛び込んだら楽になれるかもしれない
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どうせ死ぬならあたる覚悟で生牡蠣をチュルッといきたい
………………
3周はしたでしょうか
反対側から背の高い人が近付いてきます
服装から見て男性のようです
ちょっと泣いていたのでうつむきつつも身構えていると、すれ違い様、声を掛けられました
「落ちるよ」
湖の近くだったからでしょうか
とことんネガティブになっていたので
「落ちてもいいんです……」
咄嗟に気持ち悪い返しをします
「いや……ダメでしょ」
呆れ声だったのでイライラし、怒りに任せて顔を上げながら振り向くも、そこには誰もいません
辺りは原っぱと花壇なので、隠れる場所もありません
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すごく足の早い人だな!!
強引なポジティブ解釈で自分を納得させようとしますが、恐怖に勝てず、駐車場までダッシュして車を出しました
お化け出たっ!!お化け出たっ!!!
怖すぎて誰でもいいのて話したいです
Sさんに電話をかけたことがないので出川に電話をかけます
取り乱していたのと全力疾走で息が上がっていたので
「……何を言っているのかわからない」
困惑した声が聞こえてきます
何か楽しい話をしてくれと頼むと
自社ローンを滞納している生活保護の人達を10人集めて地方のホテルで清掃をさせていたところ、73歳のお婆ちゃんがノーブラで盛大にチクポコさせながら客室を回っているとお客さんからクレームが入り、ホテルの人に怒られた挙げ句ブラジャーを買いに行かされたエピソードでちょっと恐怖が和らぎました
「夜中にそんな場所に行くな」
「そういうの寄ってくるから、すぐ死にたい死にたいって騒ぐの止めた方がいい」
私の落ち込みの原因に怒られたので、お礼を言って電話を切ります
夜中のウォーキングにはお気をつけください