前回の続きです
出川は転職を7回しています
我慢が出来ない性格で、今の会社の人から話を聞くと、上司の頭をスリッパで叩いたり、営業成績の悪い後輩を山に置き去りにした模様
懲戒解雇かもしれません
電話の主は、ホームセンターで働いていた時代の同僚で45歳
182センチ103キロ
糖尿病でハゲているので、以後【マルコメ】さんとします
勤続年数のわりに万年平社員で、女性経験がなく、20代の後輩にバカにされていたそうで…………
私のようです
見かねた出川の
「俺と一緒に人生を変えませんか?」
の言葉につられ退職
札幌を離れ、私の地元の田舎まで着いてきて、出川とふたりで会社を立ち上げます
清潔感がないので営業向きではないですが、かなりの高学歴なので、主に事務と経理を担当
マルコメさんの両親の持ち家の一軒家で、出川と共に暮らしていました
小学生4年生までの女の子がどストライクなロリコン趣味で、本棚の「クジラックス」や「知るかばかうどん」の漫画を出川に勝手に捨てられ、泣いていたのが印象的です
2次元で楽しむ分にはいいと思うのですが、出川の言い分は
「そのうち現実で犯罪を犯す」
というもの
虚構エロを禁止すると欲望の発散場所を失い、犯罪率が上がるというデータを説明しますが、聞く耳を持ちません
いま思うと、自分にも幼い子どもがいるので嫌悪感を感じていたのでしょう
出川も私もお酒が好きなので、タクシー代や代行代を浮かせる為に、飲み屋の送迎にいつもマルコメさんを呼びつけていました
3人で飲むことも多かったのですが、出川はマルコメさんの容姿いじりやハゲいじりをします
最初は笑っていましたが、あまりにも度が過ぎていた為
「自分もM字ハゲだよ」
と口が滑ってしまい、喧嘩になったことがあります
私も薄毛の道ハゲです
どんなにバカにされても、ヘラヘラ笑うマルコメさん
365日無休、夜中でも事故があればレッカーに向かう出川の会社で、4ヶ月ぶりの休みをもらったときは24時間眠り続けたそうです
出川とふたりだと会計は1万円ほどなのですが、マルコメさんも加わると4万円超えもザラにあり、ここぞとばかりに食べ物を詰め込む姿に戦慄しましたが、理由ものちほど判明します
会社を初めて半年ほど経ったころ、日大君が入社したので紹介すると言われ、迎えに来てくれた出川の車に乗り込むと開口一番
「マルコメ逃げた!」
と報告されます
日大君を連れてきた夜のことです
普段は下戸のマルコメさんが
「今夜は私も飲んじゃおうかなぁ」
と宣言、梅酒のお湯割りを上機嫌で3杯あおり、早々に潰れて就寝
その後、出川と日大君が就寝し、起きると消えていたとのこと
携帯は繋がらず、警察に捜索願いを出すも、マルコメさんが捜索願い不受理届けを提出しており、居場所が掴めない状況でした
「たぶん札幌の実家に居るんだろうけど……
もう探しに行くのもめんどくさい」
マルコメさんが担当していたお客さんの引き継ぎもせず失踪したそうで、全く手をつけていない案件も多かったことから、出川は心労で5キロほど痩せました
逃げた原因に心当たりはないかと聞くも
「くだらないミスしたから軽く足で押したっけ、勝手にバランス崩して倒れて痛がってた
ウケるよね」
…………
163センチが182センチを足で軽く押して倒れるものなのでしょうか
楽しそうに説明する出川に軽く恐怖を覚えます
どう考えても笑える内容ではないと思うのですが、私の恋のフィルターはカマボコ板並みに厚いのです
「アイツはいつも嫌なことから逃げて楽な道を歩もうとする
だから人間的に成長しない
再就職したところでまた年下に顎で使われて、同じことの繰り返しになるのに……」
7回逃げた男の説得力のある分析です
戻ってきたらどうするのか聞くと
「戻ってきたいなら戻ってきてもいいけど、俺からは何もしない
アイツの人生だから」
一見心配しているように見えたので、出川に内緒でマルコメさんにLINEをします
以前、過労で40度の熱を出して倒れた出川を、マルコメさんが病院に運んでくれたことがあったので、何かあったときの為に電話番号を聞いていました
事件とかではなく、とりあえず無事がどうかを確認する内容を送りますが、既読がついたまま返事が来ません
出川に報告すると
「アイツのことはもう忘れよう
やさぐれも番号消して着信拒否しな
関わるとろくなことないから」
ウンザリした様子の出川でしたが、ブロックや着信拒否はしない主義なので非表示にしました
差し金だと思われたのでしょうか
数日後、適当なスタンプをプレゼントしてみると
「マルコメさんはすでにこのスタンプを持っています」
と表示されます
ブロックされたようです
森彦なら間違いないので即購入
なんか苦くて高級そうな時間を堪能しました
森彦が誰なのか知りたいです
長くなったのでまたまた続きます