人生のツケが押し寄せすぎ

40歳ひとり暮らし貧乏女の心境と愚痴

出川の会社の新メンバー

筑20年の木造アパートの1階に住んでいます

窓の外にはオーナーが夜逃げして取り壊すことが出来ない無人アパートがあり、日当たりは最悪です

快晴の日でも10時から14時までしか日が差し込みません

元々感情の起伏が激しい性格ですが、日照時間が少ないと鬱になるらしいので、休みの日は徒歩で1分半ほど離れた場所にある駐車場の車の中に毛布とカイロを持ち込みお昼寝をしています

ポカポカ気分で日光浴

幸せな時間だったのですが、同じアパートの住民に窓を叩いて起こされること3回

ゴミ収集車の作業員の方に起こされること2回

寝顔が凍死体に近いようです

つまらない毎日につまらない休日

Huluでアンダーエンプロイドを見ながらみかんを食べるという、モソモソとした午後を過ごしていたところ出川からLINEが来ました

「明日の夜、日大とおっさんの歓迎会するから来ない?」

日大君は1年前から出川の会社で働いています

身長183センチ、28歳のお目めパッチリイケメン

日大をトップレベルの成績で卒業したにも関わらず、就職した会社で出川に惚れ込み、現地に彼女を置き去りにして北海道の田舎までやって来た変な男です

出川と一緒に暮らしているのでゲイなのではないかと疑っています

近々室蘭からも元プロボクサーが入社すると聞いていたのでその人かと思いきや

「全然関係ない新規のおっさん

前歯ないけどよろしくね」

よろしくされたくはないですが、新規のおっさんという響きに惹かれたので顔を出すことにしました

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かなり前の画像ですが、ご飯がススムくんの松前キムチにハマっていました

1日1パックのペースで食べてしまうので高血圧になりそうです

翌日、タクシーで指定された居酒屋へと向かいます

カウンター席でイクラ丼を掻き込む角刈り

新規のおっさんが振り向きました

前歯のない気弱な感じの菅原文太です

歳は50

ギャンブルとアルコール依存症で借金地獄に陥り自己破産

働けど働けど給料の全てをスロットで溶かしてしまうので、今は生活保護を受給しているそうです

出川の会社は自社ローンもやっているのですが、中古車の支払いが滞り自宅を訪ねると、今にも崩れそうなボロアパートで灯油も底をつき、毛布に身を包んだ文太が興じる3つのスロット台

常に全てを稼動させているので、月々の電気代は28,000円

「お金がないので体で払います!」

威勢よく懇願する文太

365日無休の出川の会社は、元気と根性さえあれば誰でもウェルカムなのですが、さすがに断ろうとした矢先、日大君がいたく文太を気に入り

「俺が責任を持って面倒を見る!」

と宣言しての入社らしいです

温泉街でホテルの清掃業も始めたので、現地にワンルームを借りて似たような境遇のおじさんを3人住まわせていましたが、最後まで逃げずに残ったのが文太だと蟲毒のような話を聞かされます

ニッコニコで白子のポン酢和えと唐揚げ、レモンサワーを楽しむ文太を愛しそうに見つめる日大

「可愛い……ずっと見てたい……可愛い」

文太も満更ではない様子のキラキラした瞳です

ドン引きする出川

奇怪な絵面に、日大に文太のどこがそんなに好きなのか聞くと

「文太は博識で何でも知ってる

今は土ふるいの作り方を教わっていて勉強になる」

誇らしげに自慢しますが

「……ふるい作って何すんの?」

出川が訝しげに尋ねます

「会社の前に砂利道あるじゃないですか

あれふるいにかけると、めっちゃ綺麗に石と土に分かれるの知らないんすか?」

何故か得意気な日大

「え!? お前そんなことしてたの?」

困惑する出川でしたが

「いや、してないっスよ

そんなことして何か得しますか?」

助けを求めてこちらを振り向く出川ですが、フォローのしようもありません

「俺の会社は変なやつばかりだ……」

絶望の声が聞こえました

本業の中古車販売に加え、引っ越し、遺品整理、除雪、粗大ゴミ回収、草むしり、伐採、牡蠣の販売、客室清掃、砂場作り、鳩の駆除など業務が多岐にわたり過ぎて最早何をしたいのかわかりません

提携してる板金工場が潰れそうになり、貸したお金も戻ってこないそうです

疲れすぎて死にたくなるとボヤいていましたが、私が死にたいと言うと

「そんなこと言うもんじゃないよ」

と諭されます

楽しそうで羨ましいです

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