今回私のゲス話です
正義感の強い人はスルーしてください
数年前のことです
働きたくなくて働きたくなくて頭が狂っていた私は、生理的に無理な男性と付き合っていました
魅力はお金です
実家がお金持ちで、本人もそれなりに稼いでいました
体重は94キロ
おまけに体臭が強かったので、ワキガ用のデオドラントを勧めるも、本人が頑なにワキガであることを否定するのでどうしようもありません
私と同じで性格が悪く、友達もおらず、会話と言えば
「今日会社の若い奴らがさ~」
「昨日俺の姉ちゃんが~」
の2パターン
道行く女性を見ては
「うわっ!俺デブは生理的に無理!!」
「あのブスを連れ歩くのは罰ゲームだわ」
などと悪態をつきます
自分の体型は気にならないようです
指摘すると
「これは脂肪じゃないっ!!筋肉だっ!!」
と顔を真っ赤にして怒るのです
本人の中の女性像は、高級風俗の嬢と萌えアニメキャラが基準なので、今よりも6キロほど痩せていた私も、毎日のように顔と体型のダメ出しをされていました
痩せても痩せても
「中肉中背、なんならちょっとポッチャリ」
「二の腕がうちの姉ちゃんの太ももくらい」
「お腹出てるよ!?大丈夫!??」
ちなみに2時間8万円の高級風俗店では、太鼓を鳴らされながら赤絨毯を進み、厳かに孃の元へ向かうそうです
女性のファッションにも拘りが強いようで
「何その服っ!?」
と、嫌悪感を露にされることも度々……
本人のファッションはというと、黒しか着ない厨2病ぶりで、金や赤の鯉や龍の刺繍が入ったものを愛用していました
オーダーメイドの、雷やトライバルの絵柄が入った着物で現れることもしばしば……
足元はスニーカーで角刈り
どんな格好にも、桜吹雪の舞っているウエストポーチを合わせてきます
京都をリスペクトしており、頻繁に通っているようでした
老人や子ども、店員さんに対する思いやりの欠片もない人で、よく嫌な思いをしました
「うちは本家だから親戚を覚えるように」
と、家系図を見せられ説明されるも、全く興味がないので頭に入りません
一家全員が安定した仕事に就いており、年一で海外旅行に出掛けるのが決まりだそうです
「歩いているとヤクザに間違えられる」
「初対面では怖がられる」
が口癖でしたが、一緒に歩いていても周囲からは侮蔑の視線しか感じられません
随分とポジティブな思考回路です
お金をもらったり、物を買ってもらったり、美味しいものを食べさせてもらったり、色々連れて行ってもらったのですが
「一人じゃ来れないでしょ?」
「こんないい思い初めてでしょ?」
「やさぐれの親の収入じゃ無理でしょ?」
ナチュラルに見下してくるので、楽しいと思った記憶がありません
自身の体調不良や些細な怪我に敏感で、頻繁に病院に通い、お肌の手入れに勤しんでいるところもオカマみたいで嫌でした
最初は
「今すぐ仕事を辞めて専業主婦になり、ゲームをして遊んで暮らしていい」
という好条件に惹かれたものの、好きでもない人の子どもを産み、残りの人生を拷問みたいな気持ちで過ごすのならば働いたほうがマシだなという結論に至ります
その頃私は既にSさんに付きまとっておりましたが、まだ実家に住んでいました
和柄は仕事で1週間~1ヶ月ほど家を開けることが多かったので、自由に使っていいと鍵を渡されていたのです
いつもSさんのホームで遊ぶのが申し訳なかったので、たまにはスタジアムに招待しようと思い立ちます
「……それ大丈夫なの?」
最初こそ渋っていたSさんですが、和柄の趣味である着物や仏像の話をすると
「売って金にしよう」
と乗り気です
しつこく誘った甲斐がありました
さすがに窃盗をする度胸はなかったので出来ませんでしたが、翌日から酷い罪悪感に苛まれます
骨の髄まで小心者です
仕事の帰りにスーパーで半額のピザを買ってきました
4枚買っても280円……
あとはアスパラでも食べれば充分です
自炊などする気になりません
悪いことは出来ないもので、後日、和柄の部屋の隣に住んでいる男性からの密告で悪事が露呈しました
「……弟だね」
咄嗟の機転を利かせましたが
「弟はロン毛じゃねえだろ!!」
一瞬で論破
物凄い勢いでキレられましたが、完全に私が悪いので返す言葉もありません
当然ながら気まずくなり、和柄は癒しの京都に旅立ちます
数日後にLINEが届きました
「やさぐれを呪ってきた」
和柄はとても信心深く、部屋に代々受け継がれているという仏像や御朱印帳、僧侶が念を込めた数珠がインテリアとして点在
私と同じくアトラスのゲームや神話が好きなので、ゾロアスター教の話で小一時間盛り上がったこともありました
厄払いも行ったことがないくらい無宗教なので聞き流しましたが、その夜、仕事中に足を滑らせてスッ転び、右手首を骨折……
3ヶ月の休職となります
その後もいい部屋に住んでいる人に合鍵をもらう度、Sさんを連れ込もうと目論みますが、もう骨折はしたくありません
懲りずに邪な考え全開で、家電の使い方を入念にリサーチし過ぎて不信感を抱かれ、結果フラれたこともあります
痛みはそれほどでもなかったのものの、右手を動かすことが出来ないので不自由極まりなく、暇で暇で気が狂いそうな3ヶ月だったのです
患部にサランラップを巻いてビニールでくるみ、お風呂には入っていましたが、ギプスは蒸れるし痒くて痒くて……
ようやく外れたときは、ギプスの形の垢が右手を覆っており、この世のものとは思えない臭いがしました
今でもたまに嗅ぎたくなります